もっと荒れ模様になるかと思ったけれど思いの外静かな雪が降っています。
今朝のおぼろげな朝日です。

信濃毎日新聞「斜面」より転載  12月31日(水)

東京の新橋から田町辺りは江戸の昔、芝浜と呼ばれ、魚問屋が並んだ。魚屋の熊五郎は腕はいいが大酒飲み。ある日女房にせかされ嫌々仕入れに行くと、浜で50両入りの財布を拾う。古典落語「芝浜」である
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有頂天になり家に戻ると、祝い酒だと飲んでは酔いつぶれ寝ての繰り返し。仲間に大盤振る舞いした翌朝、女房が追及する。飲み食いの払いはどうする気? 「50両があるじゃねえか」。そんなこと知らないよ、おまえさん、夢を見たんじゃないのかい―
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50両を拾ったのは夢、大盤振る舞いはうつつか…。浅ましい夢を見たと恥じた熊公、女房にわびて酒をやめ懸命に働き始める。酒の影響で失った客が戻り、借金も返して蓄えもできた。そして3年目の大晦日(おおみそか)。女房は告白する。おまえさんに立ち直ってもらうため嘘(うそ)をついていた…
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夢うつつという。夢とうつつのあいまいな境界にいた熊公はそこを突かれ、うつつを夢と信じ込んだ。ここは50両を受け取りながら、大家の指南もあってお上に届け出て、熊公には隠し通した古女房の知恵と辛抱に敬意を表したい
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今年1年、さめないでほしいと思った夢も夢でよかったという夢も見た。実現できた夢はさてあっただろうか。「芝浜」はオチがいい。除夜の鐘を聞いて女房が酒を勧めた。つがれた湯飲みを口に運んだ熊公が動きを止める。「よそう、また夢になるといけねえ」

初夢、見られるかな?