身代金等という話が降ってわいてきました。又、自己責任という単語がわき出てきそうです。

東京新聞「筆洗」より転載  2015年1月21日
 ▼もうあれから十二年近くがたつが、胸に刺さったままの言葉がある。イラク戦争でバグダッドが陥落した直後に、かの地の病院を取材していた時、医師に投げ付けられたひと言だ。「日本人?米国の味方だろ、帰れっ」
▼市内では銃撃戦が続き、病院には次々とけが人が運び込まれ、痛みに泣き叫ぶ子らの声と、医師の怒声が響き続けていた。「希望はない。血の海を泳いでいるだけだ」「ブッシュ(米大統領)が約束した平和はどこだ」
▼米英が大義ある「テロとの戦争」と呼んだイラク戦争を、日本も明確に支持した。戦闘のために軍を送ったわけではなく「人道支援」であったが、それでも戦火にさらされた人々にとり日本は「憎き米国の味方」であったのだ
▼一つの国を戦争で破壊し尽くす。それはまさに、地獄の扉を開けるようなものなのだろう。どんな魔物が出てくるか。開けてみて初めて分かる
▼イラクとシリアの廃虚で絶望感と憎悪を糧に勢力を拡大させてきた過激派組織「イスラム国」の刃(やいば)が、日本にも向けられた。「イスラム国」対策のため周辺国に人道的な支援を申し出た日本政府に対し、邦人人質の殺害予告が届いたのだ
▼それは、理不尽で卑劣な脅しである。しかし何が「イスラム国」を生み、育ててきたのか。そこに目を凝らさず、憎悪に憎悪で向き合うだけなら、「イスラム国」の思うつぼだろう。