空に向かって何のためらいもなくまっすぐに伸びている。
春になれば芽を吹いて緑で包まれる。そんな季節が刻々と近づいています。

茨城新聞「【いばらき春秋】2016年3月22日(火)
▼「角栄ブーム」だという。昨年あたりから田中角栄元首相の関連本が続々と出版されている。書店をのぞくと、何冊か平積みになっていた。没後20年余、なぜ今、ブームなのか ▼日中国交回復、日本列島改造…。庶民の心をつかみ今太閤ともてはやされた一方、刑事被告人へ転落、振れ幅の大きい政治家だった。演説がうまく、子供たちは「まあ、そのー」の口癖を競ってまねした
▼高等小学校卒だが、明晰(めいせき)な頭脳と実行力で「コンピューター付きブルドーザー」と呼ばれた。ひたすら民衆の暮らしの向上を目指し、憲法改定には目もくれなかったという ▼〈そして現実的選択としての護憲、つまり防衛力を少しずつ増やしながら、しかし憲法は変えないという路線でいく。角栄はその路線で最後までいった〉(『丸山眞男と田中角栄』佐高信・早野透著)
▼戦争体験がその根っこにあったのは間違いない。金権政治批判は置くとして、「平和」という戦後の価値を体現した代表的な保守政治家だった。特定秘密保護法や安保関連法を制定し、国家主義的な色彩を強める現政権とは対照的である ▼角栄ブームを支えるものは、戦後民主主義そのものへの渇望かもしれない。(菊)